研究概要 |
低燃費と低公害を両立させた環境調和型の次世代自動車エンジンとして,予混合圧縮着火(HCCI)燃焼が注目されている.しかし,HCCIエンジンでは自着火現象を利用するため,着火時期の制御が困難であることが,実用化を妨げる最大の課題となっている.この課題を克服するためには,幅広い実験条件で着火時期を予知する技術の確立が必要であり,そのために15~60気圧のHCCI燃焼条件下で適用可能な包括的な燃焼反応モデルの構築を目指す. 研究3年目である本年度は,ガソリン成分の着火特性をこれまでの40気圧から60気圧まで拡張して,反応モデル構築および改良に役立てた.一方では,着火を支配する重要な素反応の速度データを,分光学的実験と理論計算で検証した. 1. 高圧衝撃波管装置の耐圧向上のための改良 最大60気圧までの着火特性を調べるためには,着火後の圧力が考慮し,衝撃波管には約300気圧(瞬間圧)の耐圧が要求される.主管や接合部の肉厚等,装置の根幹部分は既にこの耐圧をクリアしているが,光学窓やその他測定部において耐圧向上のための改良を行った. 2. 最大60気圧までの着火特性の実験的評価と反応モデルの構築 耐圧向上のための改良を行った衝撃波管を用いて,ガソリンの代表成分であるヘプタン,イソオクタン,トルエンの高圧着火特性を実験的に調べ,これまで構築してきた燃焼反応モデルの更なる改良を行った. 3. 着火を支配する重要な反応の速度データの決定 包括的な燃焼反応モデルにより,あらゆる条件でも着火時期を予測することが未だ困難なトルエン着火に関して,ミクロな観点から反応モデルの改良を試みた.トルエン燃焼の初期過程で重要なH原子やO原子と素反応について,レーザー光分解-原子共鳴吸収-衝撃波管法を用いて追跡し,その速度定数を決定するとともに,分子軌道計算を行って妥当性を評価した.
|