研究概要 |
昨年度に開発した解析アルゴリズム(Influence of Diffused Solar Radiation on the Solar Concentrating System of a Plant Shoot Configuration, Journal of Thermal Science and Technology, JSME, Vol.4, No.2, 2009, pp.272-283)について,本年度では,モンテカルロ法の考え方(谷口博,他4名,放射伝熱解析,1994年,コロナ社)を導入して,葉での日射の透過量の影響を考慮できるように改良した。この解析アルゴリズムを用いて,以下の数値実験を実施した。 夏季の太陽の位置は,仰角・方位角共に移動範囲が広いが,一方で,冬季では仰角・方位角の移動範囲が狭いことから,植物シュートで日射を最大に受ける最適形態は,受光面(葉)の仰角が小さくなるように配置される。ただし受光面が複数ある場合,重なりを避けるために方位角を広くとるように配置される結果も予想される。そこで,「植物シュートを模擬した受光面の受光量試験」として,このような特徴を持つシュート形態の受光量を,数値実験によって明らかにした。さらに,植物のシュート形態と,受光量及び指向性の関係を,葉での光の反射および透過成分を考慮して解析した。次に,「設置スペースのコンパクト化に関する評価」として,上で述べた数値実験から得られた,植物シュート形態の最適解に基づいて,受光面を分散配置したときのソーラー発電システムについて,設置スペース(受光密度)を評価した。 本年度は,受光面の温度抑制効果に関する実験に着手しており,数値実験で確認した,「主脈の折り曲げ」や「葉密度の偏分布」による受光面の温度上昇の抑制効果を,受光面の表面温度と照度の測定実験で確認している。この結果から,既製の結晶型太陽電池モジュールを分散配置する場合の,発電効率の低下量の見積もりを実施中である。なお,本年度に本研究で得られた数値実験の結果は,論文により広く公表した。
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