研究概要 |
申請者は,物体内部を通過する超音波の瞬時振動数が変化し,その度合いが内部状態の違いにより異なる現象を見出した,この現象は,これまでの方法に比較してより詳細な物体内部の組成変化を捉える可能性がある.申請者はこの現象を便宜的に超音波変調と呼んでおり,これを用いることで,通常の方法では難しい異常の検出や,内部状態の推定方法を確立し,機械装置の安全確保のみならず,これまでは計測困難と思われている種々の現象の検出を目的としている. これまでの研究から,超音波パルスの瞬時振動数の精度はフィルタやパルス形状に影響されることがわかってきた.本年度は,瞬時振動数が物体の内部状態の違いを正確に表すことができるように,適切なフィルタと超音波パルスの形状の選択方法を研究した. (1)安定した瞬時振動数を求めるために,超音波パルスをフーリエ変換した結果にフィルタを用いている.ガウスフィルタ,矩形フィルタ,二つのフィルタに絞って比較を行った.安定性はガウスフィルタが高いものの,精度は矩形フィルタが優れていることがわかった.高精度の瞬時振動数を得るには矩形フィルタが適しており,その安定性の向上には矩形フィルタのフィルタ幅を調整することで対応した,精度向上には広いフィルタ幅が必要となるが,安定性向上にはフィルタ幅を狭める必要がある.それぞれのケースに則し,最適なフィルタ幅を用いる. (2)超音波パルスは,フーリエ変換した際の周波数のピークが,滑らかに一ヶ所のみに存在する形状が瞬時振動数の精度を保持するには望ましいことがわかった.ピークが分かれるような場合は瞬時振動数の精度が悪化する.このような超音波パルスは最大値を与える中央部を中心に対象の形状である.このパルスを発生させるために,超音波パルサーのパワー,減衰の調整が必要であることがわかった.
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