研究概要 |
抄紙機や繊維機械において,接触回転系が長時間回転の後にロール外周部に周期的変形を自励的に形成する『パターン形成現象』が大きな問題となっている.本年度は,パターン形成現象の遅延・防止対策の一環として,一対のゴム巻きロールのロールゴム部がともに変形する場合のロール直径比の影響について理論および実験の両面から検証を行った.その結果は以下のようにまとめられる. (1) 実験機をモデルとした理論解析および数値計算を行った.その結果,不安定領域には結合型と独立型の2種類があり結合型の不安定がより危険であることがわかった.また,結合型の不安定は,両ロールの角形数がともに整数角形に近いときに発生する.一方ロールの角形数を整数値から最も遠くなるよう直径を変更した場合,結合型の不安定は消滅し防止・遅延対策として効果があることがわかった. (2) (1)の解析結果をもとに,一対のロールのうち一方のロールについて,結合型の不安定を発生しやすい直径と防止・遅延効果が期待できる直径の複数のロールを設計し,製作した. (3) (2)を用いた実験結果から,結合型の不安定領域を有する回転数範囲では,パターンの成長が早く,一方ロールの角形数を整数値から最も遠くなるよう直径を変更した場合に,パターンの成長が抑制されることがわかった.不安定度が大きい高回転数側の不安定領域に対する直径比の影響について,次年度検討する予定である. (4) ロール直径比を変更した実験結果は,理論解析結果と良い一致を示した. 以上の研究成果をD&D Conf. 2009(北海道)およびAsia Pacific Vibration Conference (ニュージーランド)で発表した.
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