申請の研究では、対象の物理モデルをModelica言語を用いて表し、各種の異常を組み込むことによって、コンピュータ上で正常な場合と異常な場合のデータを容易に取得できた。さらに、得られたデータを統計的に処理して特徴量を求め、診断する手法について検討した。本年度はエンジンマウントを対象にして、研究を行った。エンジンは点火燃焼によりエンジン内の圧力が上昇し、その圧力によってピストンを動かし、出力を取り出す。モデル化に当たっては、まずエンジン圧力の変化によってピストンが動くモデルとした。このときにピストン、コネクティングロッド等の動力学的挙動、エンジンシリンダーに働く圧力の作用等をすべてモデルに組み込み、それらがエンジンマウントに及ぼす力を求めた。対象を多気筒エンジンとしたので、各気筒の位置がエンジンに対して異なる。モデル化に当たっては気筒の位置により発生するモーメントも考慮した。以上の考察により、実際のエンジンの稼働状態に非常に近いシミュレーションを行うことができた。次に、エンジンマウントの劣化をモデル化し、マウントの劣化の状態によってエンジンの振動状態が変化する様子をシミュレーションで確認することができた。さらに、エンジンの振動の状態からエンジンマウントの劣化状態を予測する手法(エンジンに作用する外力と振動データを入力とし、マウントのパラメータを同定する手法)について検討し、ほぼ所定の精度で劣化状態を推定することができた。
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