申請の研究では、対象の物理モデルをModelica言語を用いて表し、各種の異常を組み込むことによって、コンピュータシミュレーションによって正常な場合と異常な場合のデータを容易に取得できた。また、得られたデータをSVM(サポートベクトルマシン)によって、学習、判別させることにより正常な場合と異常な場合を判別することができた。本年度は、エアコンを対象として研究を行った。 エアコンには、室外機と室内機の熱交換部分に詰まりが発生した場合を対象に診断手法を検討した。エアコンの場合には、熱交換器の目詰まりによってシステム全体の動作状況が変わるので、単純にある箇所のデータが変化したことから正常か異常かを判定することはできない。本研究では、数カ所のデータをSVMで学習、判別させることによる診断方法を提案した。第1ステップとしては、エアコンの各箇所の温度データをSVMに直接入力して判別させた。エアコンでは、冷媒の状態を正確に表現するためには、冷媒の温度、圧力、流量が必要となるが、本手法では圧力と流量の測定が非常に困難であることを考慮し、冷媒については温度のみを用いた判別法とした。この場合は、異常状態でのデータを含む大量のデータを学習させることによって、正常と異常の判別をさせることができたが、コンプレッサーのON-OFFによる過渡状態で判別ができなかった。第2ステップでは、計測した温度データからエアコンのARXモデルを同定し、同定されたパラメータを使ってSVMの学習、正常と異常の判別を行った。この場合には、コンプレッサーのON-OFFによる過渡状態でのデータを積極的に使うことにより、非常に少ない量のデータを用いて正常と異常の判別をすることができた。さらに本手法が実際のエアコンに対して有効であるかどうかを検証した。実験結果から本手法が実際のエアコンに対しても有効であることを確認した。
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