研究概要 |
今年度,当該研究では車両衝突時における乗員損傷を低減するための協調制御システムを検討し,この中で,下肢の衝撃制御に関してはセミアクティブアクチュエータの実装を模擬した実験を実施した. まず,昨年度に引き続き,乗員の拘束装置および緩衝材として機能するシートベルトやエアバッグを協調して制御する方法を検討した.既存の乗員保護装置による乗員に対する拘束のタイミングを正確に再現するため,マルチボディダイナミクスを用いたモデル化とシミュレーションを行った.このモデルを低次元化した上で,乗員の上肢ならびに下肢への損傷を最小限に抑えるために必要な拘束力の最適化問題を設定した.乗員保護装置としては,シートベルトとニーボスルターを想定し,これらの拘束力の上限を定め,乗員の損傷を抑制するための最適拘束力を求めた. さらにセミアクティブアクチュエータを実装することを想定したシミュレーションと実験を実施した.初期値補償を施した制御系をDSP(Digital Signal Processor)上に構築し,既存の実験装置においてニーボルスターとして動作するリニアモータへ大腿骨荷重変動に応じて時々刻々変化させる減衰力を発生させることにより,所望の制御性能が得られた.また,制御系のロバスト性の検証を行うため,モデル上の各パラメータに変動を与え,制御系への影響の度合いをMATLABにより検証し,この結果,セミアクティブ制御においても,荷重目標値に追従させる制御系の持つロバスト性は十分に高いことを示した.
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