研究概要 |
ディラック構造と陰的ラグランジュ系による多体系ダイナミクスの解析手法の確立を目的として,平成20年度は,(1)ディラック余接バンドル簡約の手法の開発,および(2)シンプレクティック構造に基づくハミルトン系の定式化と幾何学的拘束安定化手法による数値積分スキームの開発を行った.まず,ロボットなどの非線形機械システムの配位空間の余接バンドル,すなわち,運動量相空間上の正準ディラック構造を定義し,これを基に,拘束のない場合の陰的なラグランジュ系と陰的なハミルトン系の定式化を行った.さらに,配位空間に対してリー群の作用し,その作用が自由かつ適切な場合,すなわち,主バンドルが存在する場合について考察し,ディラック余接バンドル簡約の方法を確立した.これにより,ハミルトン・ポントリヤーギン変分原理の簡約化とラグランジュ・ボアンカレ・ディラック簡約,およびハミルトン・ポアンカレ・ディラック簡約の方法を統合する簡約化が可能となった.また,正準ディラック構造の基となる,正準シンプレクティック構造から誘導されるラグランジュ系,及びハミルトン系についても考察し,特に,ホロノミック拘束を受ける場合について,数値積分の観点から,離散変分原理とBDF法による離散化を組み合わせて,離散ラグランジュ系と離散ハミルトン系の定式化を行った.さらに,BDF法による離散化と幾何学的拘束安定化法を組み合わせた方法との比較検討を実施した.これらの研究成果の一部は,日本機械学会の講演会論文集,International Journal of JSME等で発表している.
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