研究概要 |
本研究では,肢体不自由者の飲料物啜り飲み動作に対する適切な介助動作の究明を行い,飲料物のハンドリングシステムを確立することを目的としている.熟練介護士による飲料物の介助動作について調べた結果,カップと被介護者の口との接触力はやや強めにする傾向があり,押し付け力を保持した状態で,カップを傾けて啜り飲み介助を行っている.このとき被介護者の顔の傾きは,カップの動きと連動しており,カップと鼻尖部あるいは鼻背部との接触が避けられ,円滑な啜り飲み動作を行っている.また,本介助動作では,被介護者の飲むペースに合わせていることが重要であり,常に被介護者の様子を見ながら介助が行われている.飲料物ハンドリングシステムにおいて本介助動作を実現させるためには,被介護者の意思による操作インタフェースが必要となってくるが,従来の食事支援マニピュレータめ操作で見られるように顎を操作部位とすることは,啜り飲み動作時には不可能である.そこでは,顔の方向を非接触でセンシングし,入力インタフェースとして利用することを検討した.ここでは,顔特徴点の中でも安定した形状画像が得られる鼻孔に着目した.被介護者の顔をUSBカメラで捉えて画像処理を行い,鼻孔画像を二値化し,面積ならびに重心位置から,首の伸展・屈曲による顔方向の変化を認識させ,マニピュレータの操作に反映させた.なお,周囲の明るさによって,鼻孔画像にノイズが入るため,二値化処理において目標鼻孔面積を定め,閾値を可変とすることで明るさに対するロバスト性のための対策を施した.被験者による検証実験の結果,いずれの被験者も数回程度の練習でマニピュレータの操作が行えるようになった.
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