研究概要 |
本研究者らは,構造が簡単で,小さなひずみで大きな反射角度が得られ,可動部品に磨耗が生じないという優れた特長を原理的に有する光スイッチを提案している.本研究は,その原理に基づく多入出力光スイッチを容易に製造する方法を明らかにすることを目的とし,本年度は次のことを行った. (1)光スイッチの製作方法の改良 これまで、帯状薄膜ミラーの固定にアルミ箔と接着剤を使用していたが、その厚みが光ファイバーの挿入失敗の障害になり、部品製作の歩留まりを低下させる原因の1つであった。そこで、薄い接着フィルムを使用した接着方法に変更した結果、容易に固定することができるようになり、かつ、部品製作の歩留まりの向上につながった。 (2)1入力多出力光スイッチの試作と動特性評価 平成21年度に設計した1入力光スイッチを上記(1)の方法で製作し、その動特性を調べた。その結果、帯状薄膜ミラーを駆動するために必要な電圧が研究当初よりもかなり高くなった。この原因について調査したところ、透明電極上に製膜した絶縁膜の膜厚や膜質が研究当初の光スイッチから変化し、帯状薄膜ミラーを電極に吸着させるのに必要な電圧が高くなってしまっていたことが明らかになった。これは、スパッタ装置やターゲット材料の状態が変化したことに起因すると思われる。そこで、最適な製膜条件を調べ、その条件で製作した光スイッチを用いて、動特性を評価した。その結果、帯状薄膜ミラーの駆動に必要な電圧を下げることができた。しかし、1ステップずつの駆動は再現性がなく、さらに製作方法を改善する必要がある。 (3)研究の総括 これまでの研究で、帯状薄膜ミラーを用いた光スイッチの部品製作方法や組立方法の改善、駆動信号の改良などで、多入出力光スイッチの実現に向けて一定の成果を残すことができた。しかし、帯状薄膜ミラーの駆動の再現性が低く、今後、製作方法をさらに改善することが必要である。
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