積層圧電アクチュエータに急激に電圧を印加すると接触している物体を跳ね飛ばすほどの衝撃的な力を発生する。本研究では、この衝撃力の利用法を確立するための基礎研究と、応用例として、圧電素子で慣性体を叩いて移動する微動機構、および流体中でピストンを急激に移動させる方式の噴射ポンプについて研究を進めた。 1.微動機構本方式では、打撃された慣性体の慣性力と床面との摩擦力の大小関係を利用している。ある一方向への移動が基本であり、シミュレーションモデルによる解析によって、1ステップの移動量、平均移動速度などが予測できるようになり、機構の設計に有用な資料が得られるようになった。さらに、素子と機構重心の位置関係、および打撃力の大きさによっては、本微動機構は圧電素子を1個しか装着していないにもかかわらず、移動方向を変更できることが分かった。今回作成したシミュレーションモデルは一次元であったが、打撃によって機構に発生するモーメントによって床との抗力が変化することを含めて解析したところ、両方向に移動することが裏付けられた。 2.噴射ポンプ本方式では、シリンダ内のピストンを急激に移動させ、流体をノズルから微小量噴射させる。その直後に素子の収縮によって同じノズルから流体を吸入する。シリンダ内の圧力変化を集中定数モデルによるシミュレーションによって解析し、圧力が絶対圧でゼロまで低下するとの結果を得ているが、アクリル製透明ノズルを用いた実験で、ピストン表面と流入噴流部にキャビテーションが発生していることを確認した。また、管内を流動する直径1mmの白と黒の粒子を検出し、噴射流による選別実験を行った。接近して流れてくる粒子群も分離できるように制御アルゴリズムを変更し、粒子の検出分離の成功率を95%程度に上げることができた。
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