研究概要 |
本研究は,人と作業ロボットが互いに協調しながら効率的に作業を行える「人間機械協調型の高効率セル生産システム」の構築を最終目標とし,人間の機械操作特性や情報判断特性を基礎研究により明らかにした上で,a)作業状況や支援情報を作業映像に重ねて強化現実的に作業者に伝える高臨場・高効率情報伝達技術("視覚支援によるスキル拡張"と名付けた)や,b)作業を支援する特性や熟練者のスキルを仮想的に遠隔操作系に持たせて支援する協調的介入方式の作業支援技術("物理支援によるスキル拡張"と名付けた)を確立し,作業性を飛躍的に高めることを目指している. 平成21年度前半は,部品挿入などの機械作業や電子基板の半田付け作業を例にとり,熟練者が経験から蓄積した作業スキルをロボットの遠隔操作データから抽出する方法の具体検討を行った.そして,電子部品の半田付け作業に対して,実際に数名の熟練者の作業スキルを抽出する実験を行い,多変量解析の手法に基づいて作業スキルを戦略チャートとして具体化することに成功した.この戦略チャートからは,作業者が直接知ることのできないはずの半田ごての先端温度などの情報も作業戦略において重要な役割を果たしていることが確認でき,熟練者の作業戦略や失敗回避の戦略のほか,人による戦略の違いなどを判別することもできることがわかった. 21年度後半は,得られた戦略チャートを元に,いくつかの具体的な作業支援機能をシステムに実装し,熟練者の作業特徴を用いて,作業初心者に対して効果的に作業支援("スキル拡張")を行えることを実証した.これにより,今後の「スキル拡張型人間機械協調セル生産システム」の構築に向けた重要な指針が得られた.
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