研究概要 |
本研究課題では,高度な操りを目指して多指ロボットハンドによる複数対象物把握系の安定性を解析した.そして,次の成果を得た.(1)二次元平面内の二対象物把握系について,摩擦が混在する場合の把握系の剛性行列を導出した.数値例により,本手法の有効性を確認した.この成果は高く評価され,海外の学術雑誌に掲載された.(2)二次元平面内の把握に関して従来とは異なり,3個以上の対象物を把握する場合を解析した.接触点の摩擦の有無が混在する場合を考慮し,把握系の剛性行列を導出した.数値例では,三つの対象物を把握した場合を例示し,接触点に摩擦が有る場合には5行5列の剛性行列が得られることを示した.この行列の固有値と固有ベクトルを求め,5分類した把握系の運動とその安定性を導出した.得られた結果は直感と一致し,提案手法の有効性が示された.この成果を国内の学術講演会,海外の国際会議において発表し,高く評価された.(3)三次元空間内で単一対象物把握を把握する場合を解析した.従来とは異なり,接触点近傍の形状を表面の幾何学,すなわち計量テンソル,曲率,捩率を用いて解析した.これにより,より一般的な対象物形状を扱うことができるようになった.さらに,接触点の摩擦の有無が混在する,より一般的な場合をも解析し,把握系の剛性行列を導出した.数値例を用いて,剛性行列の固有値と固有ベクトルを求め,把握系の安定性とその方向を明らかにした.得られた結果は直感と一致し,本手法の有効性が確認された.この成果を国内の学術講演会等において発表し,高く評価された.(4)平面内で三つの対象物が干渉する場合の効果,平面内で指先が回転する場合の効果を解析した.次年度で,より詳細に解析する.本研究の成果は多指ハンドの把持位置最適設計のみならず,生産におけるワーク固定用の治具配置の最適設計にも応用可能であり,産業分野において重要な成果である.
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