50cm四方程度の範囲をナノメートルの分解能で動作する多自由度アクチュエータの開発を試みた。複数の圧電素子を用いた多自由度インチワームを基本構成とした。インチワームは、変位を発生する要素と位置を保持する要素からなる。本年度は位置の保持に、重力による摩擦力を用いた。摩擦力は物体が接触するときに発生し、動作の妨げになる。そこで、移動時には浮上によって摩擦の無い状態を生成する。鉛直方向に高速振動する圧電素子を用いて位置保持機構を浮上させる。浮上することによって摩擦が存在しない状態の位置保持要素と、着地している摩擦が存在する状態の位置保持要素を、水平方向の圧電素子で連結する。位置保持機構を順番に水平方向に移動させる。移動には、低周波で収縮する圧電素子を用いた。鉛直方向の高速振動はオンオフ制御され、オンオフ制御の制御周期は水平方向に移動する圧電素子の制御と同期している。基礎実験を行ったところ、任意の方向に移動できた。次に、移動結果を計測するシステムを開発した。計測対象物に位置計測素子を搭載し、その周囲に移動光源を配置した。移動光源は位置計測素子の出力を用いたフィードバック制御とし、対象物体に追従して移動する制御方法とした。3個の位置計測素子を120度の角度間隔で配置することにより、並進2自由度、回転1自由度の3自由度計測が可能になった。計測分解能を求めたところ並進移動の分解能は約10ミクロンであった。計測範囲は使用する移動光源の移動範囲に等しく、実験では20cmの計測範囲が得られた。計測された回転角度は-60度から+60度であり、対称性を考慮に入れると、1周すなわち360度の回転変位が得られた。
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