50cm四方程度の範囲をナノメートルの分解能で動作する多自由度アクチュエータの開発を試みた。複数の圧電素子を用いた多自由度インチワームである。インチワームは、変位を発生する要素と位置を保持する要素からなる。 本年度は移動部分に浮上を発生させる摩擦フリーの移動技術の可能性を明らかにした。鉛直方向に高速振動する圧電素子を用いて位置保持機構を浮上させる、摩擦制御が可能な位置保持要素を用いた。複数の位置保持機構を水平方向の変位機構(圧電素子)で連結した。水平方向の移動には低周波で収縮する圧電素子を用いた。鉛直方向の高速振動はオンオフ制御され、オンオフ制御の制御周期は水平方向に移動する圧電素子の制御と同期させた。浮上している位置保持機構を順番に水平方向に移動させる基礎実験では、任意の方向に移動できた。以上により、摩擦フリーで移動できる可能性が明らかになり、位置決め性能の向上に役立つと期待される。 次に、移動結果を計測するシステムを開発した。計測対象物に位置計測素子を搭載し、その周囲に移動光源を配置した。位置検出素子が移動光源を検出する時刻から位置を計測した。3個の位置計測素子を正三角形状に配置することにより、並進2自由度、回転1自由度の3自由度計測が可能になった。計測分解能を求めたところ並進移動の分解能は約10ミクロンであった。インチワーム型アクチュエータの変位計測に役立つと期待される。 最後に、圧電アクチュエータへの印加電圧と入力電流から、変位の推定を試みた。変位と印加電圧の相関性よりも、変位と入力電流の積分によって得られる蓄積電荷の相関が高いことが明らかになった。この成果により、圧電アクチュエータのセンサレス状態推定が可能になると期待される。
|