研究概要 |
平成21年度は,工場内の動作姿勢を捕捉するモーションキャプチャシステムの改良,および実際の作業環境に配置し実作業の計測をおこなった. 構築したシステムは2台の高密度ハイビジョンカメラを設置した光学式で,筐体の移動が可能である.注目マーカを識別するターゲット抽出ユニットと,カメラ位置と角度をもとにマーカ三次元座標を復元する座標再構築ユニットから構成される.計測空間内の照度を室内で蛍光灯を点した場合の照度に設定し計測実験を行なったところ,どのマーカ素材でも良好な認識精度を得ることができた.この結果は作業中の挙動に影響を与える恐れのあるマーカ発光用の電源やケーブル類を装着する必要が無いことを示している.曇天でも室内以上の照度が得られることを考えると,本計測システムを用いて屋外作業や日常動作を計測環境に影響を受けずに取り込むことが可能であると考えられる. 上記の成果を踏まえ,本計測システムで得られた再構築位置座標の精度を検証した。アクタースーツおよび作業用ユニフォームを着用した状態で,膝関節の屈曲・伸展の動態計測を行った.アクタースーツに装着した球型マーカおよび作業用ユニフォームに装着したバンド型マーカそれぞれを抽出ターゲットとしたところ,それぞれの復元結果から屈曲角は24°と推定され,X線投影結果とほぼ一致した.とくにバンド型マーカでは,球型マーカによる復元にくらべ,よりX線投影図に近似した結果が得られた.身体に密着していない作業ユニフォームの計測でも屈曲角度が60°以下の場合はアクタースーツとほぼ同等の計測結果を得られることがわかる.ユニフォームのサイズ・形状と被験者の体格が計測結果に与える影響については今後検討する余地があるものの,重量物挙上の初動時や蹲屈位での溶接等の作業などの重労働作業において,着衣の影響を受けることなく挙動を再構築できることがわかった.
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