研究概要 |
人間の身体運動のリーチングメカニズムは,運動生理学などの分野からいくつかの仮説が提案されている.本手法は運動生理学におけるEP仮説を拡張した制御法であり,目標位置での釣合情報のみでフィードフォワードのリーチングが可能となる.本研究ではロボット工学の観点からそれらの収束性について解析し,複雑な実時間計算を行うことなく人間らしい滑らかな動作が実現できることを明らかにすることである. 平成21年度では,平成20年度に続き,筋肉をシンプルなワイヤモデルを用いて近似したシステムに対し,筋骨格モデルへの目標内力を入力した際の位置決めについて,シミュレーションを用いて解析を行った.軌道追従にも対応したシミュレーションにより,本制御手法がより器用な運動の実現の可能性を示すことが出来た.その際,システムの筋配置と内力の決定法が,収束性に大きな影響を与える.本年度では遺伝的アルゴリズムを用いて筋配置と内力の決定法に考察を行った. 予備的な研究として,手先の現在位置と目標位置が既知な場合について,より効率的に位置決めを行う内力決定法について提案した.この内力決定法では,現在位置と目標位置のポテンシャル勾配が最大となるように内力を決定する方法であり,生体リーチングのバネダンパ仮説よりシンプルである. また,実際に筋肉・腱に代わりにワイヤケーブル,DCサーボモータを用いた2自由度マニピュレータを作成し,提案するフィードフォワードリーチングについて,目標位置への収束性を実験によって確かめた.
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