研究概要 |
タンパク質X線結晶構造解析の一連のプロセスの内、結晶装填システムによって結晶が装填されたホルダーを液体窒素で急冷し、液体窒素デュワー内の結晶保存用カセットに自動的に格納するためのシステムの開発を行っている。平成21年度は、ホルダー運搬用ロボットの開発と結晶保存用カセットへの格納実験、タンパク質結晶を用いたテスト実験を行った。 ホルダーを把持するロボットハンドの製作を行い、平成20年度に購入・製作した部品および既存の産業用ロボットを組み合わせてホルダー運搬用ロボットを完成させた。液体窒素中の結晶保存用カセットにホルダーを安定に格納するためには、力覚センサを用いたカセットの位置と向きの校正が重要であり、動作ソフトウェアに加えて、校正を行うソフトウェアの開発も行った。まず液体窒素なしでカセットにホルダーを格納するテストを行い、その後実際に液体窒素ありで格納テストを行った。4,310回のテストのうち4回ほど格納できないトラブルがあったのでエラー率は0.093%であった。ホルダーが格納できないと次のホルダーを格納する場合に衝突することが考えられるため、引き続きエラー率低下を目指す。 ホルダーは単に格納できれば良いわけではなく、タンパク質結晶の質を落とさないことが重要である。そこで、実際にタンパク質結晶を用いた実験を繰り返し行うためには大量のタンパク質結晶が必要になるため、タンパク質結晶を安定して作成するための結晶化予備実験を行った。比較的安定に結晶が得られるリゾチームとソーマチンを用いて、結晶化のための条件の検討を行った。得られた結晶を用いて、従来研究者が行っていたマニュアルで冷却・格納を行い、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーのビームラインBL-5Aを用いてX線回折データの収集を行った。
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