研究概要 |
本研究課題では,血流量波形,血圧波形なども生体に準じて再現可能な心循環機能シミュレータの開発を目指している.平成21年度は,平成20年11月の研究開始から引き続き心循環機能シミュレータを製作し,三相インダクションモータが駆動させる油圧ダイアフラムポンプを模擬心臓部と金属製のパイプを模擬血管部とする循環回路を構築した.この循環回路は拍動数10-120bpm,ポンプストローク0-100%の範囲で制御可能であり,電磁流量計と圧電トランスデューサによって,流量,模擬左室圧,模擬大動脈圧をモニタリングできるように計測系を具備した.模擬血液として水を用いた計測では,流量は拍動数に対して線形に変化し,10bpmにて1L/min、120bpmにて10L/min得られることが確かめられた.一方で,模擬左室圧,模擬大動脈圧は拍動数に対して非線形に変化した.流量波形,模擬大動脈圧波形については相応の波形状が得られつつあるものの,特に模擬左室圧波形について,ポンプの整流に用いる弁の開閉に伴う影響と考えられるノイズ成分が認められるため,更なる特性の向上を目指している.また,シミュレータ等による心拍出が無い定常状態での補助人工心臓装着下での血流動態を確かめるため,PIV(particle image velocimetry)手法によって補助人工心臓弁近傍の流れを解析し,弁葉形状が流れの動態に及ぼす影響を確かめた.さらに,シミュレータの拍動状態の参照とすべく補助人工心臓を装着したヤギの心拍計測を実施し,ランジュバン方程式を活用した数理的特性を解析しつつある.
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