研究概要 |
ナノ秒程度の非常に短い時間, 超高電界(10kV/cm程度)をがん細胞に印加すると, 細胞を物理的に破壊するのではなく, 細胞の自発的死(アポトーシス)を起こしがんを治療することができる。この効果を体内部の患部に非外科的に適用し治療に利用できるように, アンテナにより患部に集束板で集中して電界を印加する方法について研究している。本年度は, がん治療用パルス電磁波発生装置の周波数成分の高周波化を誘電体構造の見直しにより行い, 誘電体の固体化, スイッチのガス化により周波数成分を250HHzから350MHzへと上げることができ, 振動の減衰時間も長くすることができた。これにより細胞膜, 核膜に対する細胞内部の細胞質, 核質に印加される電圧の割合を上げることができ, がん細胞に対しアポトーシスを効率よく生じさせることが可能となると思われる。電磁波放射アンテナについては集束アンテナの構造材の検討を行い, 形状の崩れのおきないよう樹脂材を使うことで, 正確に1箇所で集束できるようにした。また, 250MHz成分を持ち, 集束点にて電界強度10kV/cmのパルス電磁波を酵母菌に照射する実験を行い, 電磁波による電界を100パルス印加したところ菌の生存率が70%に, 200パルス印加したところ30%に減少した。パルス電界を100パルス, 酵母菌に印加する場合に関しては, 電極で直接10kV/cmの電界強度のパルスを印加した場合も調べ, パルス電磁波を100パルス印加した場合と同じ生存率となった。この結果より, 直接電極にて電界を印加した場合と同様の効果を, パルス電磁波により生成した電界で得ることができることが示され, 高出力のパルス電磁波でがんが治療できる可能性が示された。
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