研究概要 |
ナノ秒程度の非常に短い時間,超高電界(数10kV/cm程度)をがん細胞に印加すると,細胞を物理的に破壊するのではなく,細胞の自発的死(アポトーシス)を起こしがんを治療することができる。この効果を体内部の患部に非外科的に適用し治療に利用できるように,アンテナにより患部に集束板で集中して電界を印加する方法について研究している。本年度は,誘電体,集束アンテナの構造材の見直しを行ったがん治療用パルス電磁波発生装置の特性調査を行い,電磁波最大集束電界強度25kV/cmを達成した。これにより細胞膜,核膜に対する細胞内部の細胞質,核質に印加される電圧の割合を上げることができ,がん細胞に対しアポトーシスを効率よく生じさせることが可能となると思われる。そして,発生電界を非接触で正確に測定するためのレーザを用いた電界強度分布の測定の検討を開始するに先立ち,電磁波発生装置内のパルス発生部の生成する電界についてレーザ計測を行い,その電界の動きについて明らかにした。また本年度は治療に最適なパルス電磁波の周波数,電界強度,パルス数に対する検討も開始し,まず電界の周波数,パルス数に関して大腸菌を用いパルス電界の周波数を20~200MBz,パルス数を100~1000パルスと変え,影響を調査した。さらにがん細胞に対してパルス電界の周波数を20~200MHzまで変えて影響の調査を行った。その結果,周波数,パルス数の違いにより大腸菌およびがん細胞に与える影響がいろいろ異なってくることが明らかにされ,がん治療用パルス電磁波発生装置に必要とされる特性を一部明らかにすることが出来た。
|