研究概要 |
平成21年度は超高速スイッチング形電力変換器の新トポロジーについて理論展開を更に拡張するとともに,スイッチング素子の更なる高速駆動回路に関する検討を行い,以下の研究成果が得られた。 (a)超高速スイッチング素子に適した新トポロジーの検討 電力変換器で使用される全てのスイッチング素子が同一電位で駆動され,複数の絶縁電源を必要としない全く新しいトポロジーとしてフィッシュボーン構造を提案したが,これを更にマルチレベル化する新たな手法について考究した。その結果,インダクタセルを用いる手法と拡張フィッシュボーン構造(電流源モジュールの並列多重化)による手法を考案した。 (b)次世代超高速スイッチング素子の駆動回路に関する検討 次世代超高速スイッチング素子としてSiCを基材としたMOSFETが有力視されているが,これを高速に駆動するゲートドライブ回路について検討した。その結果,インダクタに蓄えたエネルギーを用いてインパルス電圧を発生させ,それを用いて主素子のゲート容量を高速に充放電する新しい駆動回路を開発した。これにより,主素子のオン時間を通常使用される駆動回路の40%に短縮できることを確認した。 (c)計算機シミュレーション インダクタセルや拡張フィッシュボーン構造に基づくマルチレベル電力変換器の回路シミュレーションを行い,良好な動作波形を確認するとともに,出力レベル数と導通損,使用素子数,絶縁電源数などの関係を比較評価した。その結果,電流源の平滑リアクトル損失を,出力レベル数に反比例して低減できることを明らかにした。 (d)プロトタイプによる実験検証 インダクタセル方式と拡張フィッシュボーン構造によるマルチレベル化の手法について,1kWのプロトタイプを試作し実験的に各種動作試験を行った。その結果,所期の5レベル波形とともに,87.8%の変換効率を確認した。
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