プラズマアブレーションにより固体から発生したガスを原料ガスとして材料プロセスへ応用することを研究目的として、以下のことを行った。 アブレーション用パルスプラズマ装置として電熱加熱型パルスプラズマ推進機、固体原料としてテフロン(PTFE)を用いた場合のパルスプラズマの基本特性を理解するため、放電電流と印加電圧の波形の測定、発光分光法に基づくプラズマ組成の推定を行った。測定した電流と電圧の波形よりμ秒単位ではあるが、kAオーダーの電流が流れ、瞬時電力はMWオーダーに達することが分かった。測定した電流と電圧の波形を基に放電回路をRLC等価回路で表し、その抵抗成分からプラズマ中の電子密度を推定したところ10^<20>-10^<21>m-^3の高密度が推定された。一方、発光分光法に基づくプラズマ組成の推定の結果、PTFEより主に炭素とフッ素が昇華により生成されており、アクチノメトリ法で推定したフッ素原子の密度は10^<20>m^<-3>のオーダーであった。 さらに、混入ガスの違いがプラズマ組成へ及ぼす影響を理解するため、PTFEのアブレーションにより発生したガスと組成が類似と考えられるCF_4ガスとArを含む誘導性結合型プラズマ中へ酸素を混入し、酸素混入がプラズマ組成へ及ぼす影響について検討した。その結果、フッ素原子密度はAr希釈に関係なくCF_4とO_2の混合比が4:1程度になったときに最大となり、また、CF_4とO_2の混合比を4:1、かつ、全圧力と投入電力を一定にした場合、Ar希釈率が70%程度に達するまでフッ素原子密度はAr希釈率に依存しないことが明らかになった。また、モデルより主要なラジカルはフッ素原子、酸素原子であり、CF、CF_2ならびにCF_3ラジカルの密度は低いことが予測された。
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