本年度は、前年度までの成果をベースに、試作した全高温超伝導小型モデル機の回転試験を実施した。また、風力発電他を想定した大形低速発電機の概略設計検討を実施した。さらには、本回転機を直流電気鉄道に適用する解析的検討も実施した。以下に、得られた成果を列記する。 (1) 市販のコアを利用して、小型モデル機の設計を行った。回転子巻線については、ロータバーに必要な臨界電流が得られるように、使用する高温超伝導線材の並列バンドル数を決定した。また、固定子巻線については、使用する高温超伝導線材の臨界電流値を勘案して巻数を決定した。さらに、決定した巻数を実現するためのレーストラックダブルパンケーキコイルの形状や構成を決定した。 (2) 設計に基づき、モデル機を試作した。試作に際しては、巻線の各工程において、高温超伝導線の臨界電流特性の劣化が無いか、液体窒素中における実測定によって逐一チェックした。 (3) 試作機を、既設のメタルクライオスタット内に固定し、液体窒素浸漬冷却後に回転試験を5~60Hzの駆動周波数において実施した。その結果、全超伝導機としては世界で初めて1800rpmの高速回転試験に成功した。さらには、ビスマス系高温超伝導固定子巻線について、その臨界電流値を超える電流値においても暫時回転状態を維持出来ることを実験的に実証し、即ち全超伝導回転機においても、過負荷耐量の概念が成立することを示した。 (4) 非線形等価回路解析に基づいて理論解析を実施し、試作機の限界特性を検討した。 (5) 上記成果をベースに、風力発電を想定した5MW級高温超伝導かご型誘導同期発電機について、概略ではあるが設計検討を実施した。 (6) 研究した高温超伝導機を直流電気鉄道へ適用する解析的検討も実施し、同機の回生機能を利用することによって、高効率直流き電システムが実現可能性であることを示した。
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