研究概要 |
汚損沿面放電モデルの開発と関連して,局部放電の維持機構の解明を最終目標として,電解質水溶液面を進展する局部放電からの電流流入分布や電極降下に対する電解質の影響を明らかにすることを目的としている。本年度は,まず昨年度取り残した3種類目の電解質(塩酸:HCl)を用いて溶液面における50%フラッシオーバ電圧,電流値および局部放電からの電流分布の測定を行った。なお,塩酸は水で希釈して塩化ナトリウム水溶液および塩化カリウム水溶液の場合と同じ導電率になるように実験条件をそろえた。塩酸の場合の溶液面における50%フラッシオーバ電圧は塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムの場合と比べて大きいことを確認した。また,塩酸の場合の電流分布は,塩化ナトリウム水溶液および塩化カリウム水溶液の場合と異なり,電流は局部放電に沿って広い範囲から流入していることがわかった。なお,電流値は塩化ナトリウム水溶液および塩化カリウム水溶液の場合と大差はなかった。また,交流電圧を印加した場合の滞留性局部放電およびインパルス電圧を印加した場合の進展性局部放電の発光の観察を行ったところ,いずれの場合も媒質に起因する発光スペクトルは観測されなかった。次に,3種類の電解質を用いて,局部放電の電極降下の測定を行った。印加電圧を変化させて電圧-電流特性から電流零のときの電圧値を外挿することによって電極効果を推定した。また,電圧-電流特性に対する直列抵抗の影響を考慮するために3種類の直列抵抗を用いて推定結果の検証を行った。その結果,本研究で用いた直列抵抗の範囲では電圧-電流特性に影響がないことを確認するとともに,電極降下の値は電解質の種類に関わりなく,電解質の抵抗率で決定されることを明らかにした。また,電極降下の値は金属電極間の放電の場合と比べて大きいことを確認した。
|