研究概要 |
電解質水溶液の濃度と導電率に着目して,導電率を同じにした場合のフラッシオーバ電圧と電解質との関係について検討を行った。その結果,電解質が1価のイオンで構成される場合,陽イオンの密度とフラッシオーバ電圧との間に一定の関係があることを明らかにした。また,フラッシオーバ電圧と抵抗率との間には一定の関係があるが,その関係は電解質の種類によって異なるので,濃度が異なるとフラッシオーバ電圧の大小関係が入れ替わることもありえることを明らかにした。さらに,抵抗率とイオン密度の関係および局部放電からの電流分布をあわせて検討した結果,抵抗率が同じ場合,塩酸水溶液はイオン密度が極端に少ないために,陰極となる電解質溶水液面の広い範囲から電子の供給を受けなければならず,そのために電流分布は広範囲になることがわかった。なお,電子の供給が光電子放出によるものか,陽イオンの衝突によるによるものかあるいは電界放出によるものかは明らかにすることができなかった。 一方,針電極と電解質水溶液との間における局部放電の発光現象を分光器により詳細に調べた結果,塩化カリウム水溶液および塩化ナトリウム水溶液の場合に陰極材料であるカリウムならびにナトリウムの発光スペクトルを観測した。このことはアークスポットの形成を示唆している。電解質水溶液面を進展する局部放電の静止写真の観察から,放電の根元で陰極材料の発光が認められており,少なくとも局部放電の根元付近ではアーク放電の性質に近い放電現象になっていると考えられる。 これまでの研究成果と今年度の研究成果から,電解質水溶液面を進展する局部放電はアーク放電の性質とグロー放電の性質を併せ持つと考えられることを明らかにした。
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