本研究は、新しい電力システム構想の提案とその解析・制御・評価技術についての基礎研究を行うことを目的としており、本年度は昨年度に引き続き、分散電源が連系されたシステムの解析・最適化手法の高度化について検討を行った。 まず、最近の新たな電力供給形態であるスマートグリッドに注目し、その調査・分析に基づく新たな電力システム構想についての検討から、需要家での自律分散制御を行うセルグリッド構想を立ち上げ、階層構造を考慮したインテリジェント計測、システム最適化についての開発を行った。 システム解析高度化のためのインテリジェント計測として、限られたセンサ情報から分散電源出力等を精度良く把握する手法を、ICA(独立成分分析)を利用して開発した。提案手法では、有効・無効電力潮流を観測し、変換器の力率条件などを用いて時空間解析することで系統に存在する分散電源の出力を推定している。ICAの電力分野への適用は類を見ないものであり、不確実性をもつ分散電源の解析・制御を行うために、その精度向上と適用範囲の拡張を目指してさらに検討を進めていく予定である。次に、システム最適化手法の高度化として、メタヒューリスティクスに基づく最適化手法に着目し、突然変異や階層構造システムなどの自然界の摂理を組み込んだ新たなアルゴリズムの提案を行い、探索性能の向上などを達成し成果を得ている。これらの開発手法を基に、分散電源に対する群れ理論を模擬した自律分散制御などの取り組みへの検討を今後手がけて行きたい。これらの研究成果は、電気学会講演会および論文誌において研究発表を行っている。
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