今年度においては、以下に示す3件の雑誌論文および1件の国際会議発表を行った。具体的に、3件の論文発表においては、研究実施計画に記載されているように、各種材料(誘電損失材料、磁性損失材料、抵抗皮膜材料)を用いた電波吸収体に対し、電磁界および伝熱連成解析連成シミュレーターを用いて解析モデル化して、高電力照射時の温度分布を計算した。その際に、メッシュ構成や大きさを変化させ、解析結果の収束性を併せて確認した。 更に、その解析結果の信頼性を確認するため、高電力照射装置を開発し、それを用いて実際に設計した各種電波吸収体に対して高周波高電力を照射し、表面温度や内部温度を計測した。この結果、解析結果と実験結果は良好に一致することを確認し、本シミュレーターの有効性を確認できた。更に、解析と実験の両面から高電力照射時の各種材料を用いた電波吸収体の温度分布を把握することが出来た。 なお、1件の国際会議発表においては、上記研究に付随して、高電力照射により発熱した電波吸収体の表面に対し、送風を行うことでその冷却効果を解析的に検討した。この結果、送風時および非送風時を比較すると、その表面温度や内部温度が明らかに低下することが確認され、今後、対電力性能を有する電波吸収体を開発するにあたり重要な基礎的データを提供することが出来た。 上記の状況を踏まえ、今後さらに本解析手法の高機能化(誘電率変化の考慮、熱定数の変化の考慮等)を進めると共に、実験設備の充実を図り、研究を進める所存である。
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