昨年度に整備した解析環境を使用し、実験による測定値と解析値の差の原因を探るべく、解析法を代えて結果の比較検討を開始した。 これまで、モーメント法を使用して行ってきたが、今回、建物内のより詳細な電磁界を求めるために、FDTD法を使用した解析を検討した。FDTD法は建物の材質をモデル化することが比較的容易な方法である。このため、接地抵抗に関連する大地や構造部材の導電率、透磁率を取り入れたモデルを作成することができる。CADデータをFDTD法に変換することによってタワーのシリンダーモデルと細線近似モデルを作成した。 サージ電圧の評価のために、エレベータシャフトから50cm離して、電力線を模擬する電圧測定線を塔頂から大地まで設けた。電圧は、この線路と各点との間に1kΩを挿入し、抵抗値と電流の積から各部の電圧を求める方法を採用した。 解析結果ではアンテナ基部、各展望台、地上部の電圧波形を、波頭長をパラメータにして求めた。波頭長が短い場合には、モーメント法による場合よりも顕著な速い振動が生じ、波頭長が長くなるとサージ電圧は減少する結果が得られた。また、第二展望台から地上までの構造体の増加及び径方向の増大によるインピーダンスの低下が見られる。 過電圧の空間時間的変化を求めるために、サージ電圧の可視化を行った。現東京タワーとスカイツリータワーのそれぞれの塔頂への雷撃時に、避雷針と避雷導体を設置した場合の電磁界の時間変化のムービーを、作製することができた。今後、展望台や大地近くの建物内の電磁界のムービーも作成し、専門外の人でもわかるように、研究結果を求める準備を行った。
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