数100メートル以上になる最近の高構造物への落雷時に発生する過電圧問題研究最終年度にあたり、研究のとりまとめを行った。 高構造物の過電圧評価法はこれまでなく、一般的な評価法の検討を行った。建物自体の過電圧は、避雷針への雷撃によって避雷接地線に発生する過電圧を持って評価することが行われている。この評価では建物全体が大地に対してある時間の間、電位が上昇することを意味し、建物内での過電圧発生の評価に直接的に結びつかないことが明らかになった。そこで、本研究では、建物内の電力・通信配線に発生する過電圧を評価すべく、新しく、大地間にあるインピーダンスを有する導体を避雷針に接続し、建物各部間に発生する電圧でもって評価する方法を検討した。 建物が高くなると電位分布の時間変化が異なることに加え、途中の電圧値も異なることが考えられる。そこで、建物階数による過電圧発生の変化を調べるために、3階から20階までの高構造物モデルについて各フロアの配電線路に誘導されるサージ電圧を数値電磁界解析法でシミュレーションした。その結果、階数が高くなるほど発生過電圧が不均一になる、すなわち来現起点に近い上部以外に大地側にも高い過電圧が現われることが分かった。これにより、大地側の接地が重要であることが明らかになった。 東京タワーと東京スカイツリーのサージ特性を数値シミュレーションと縮小モデル実験を行った。その結果、高さの違いは、過電圧発生の継続時間にのみ影響し、過電圧値は鉄塔の構造に依存することが明らかになった。東京スカイツリーはペンシルスタイルであるため、鉄塔自体の電位上昇は東京タワーよりも高くなるが、東京タワーより多い金属導体によって、中の配電線路に発生するサージ過電圧は上昇が抑制される。このため、東京スカイツリーにおける雷対策は、避雷器のエネルギー耐量を倍増しさえすれば、これまでの耐雷設計指針を適用可能である。
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