研究概要 |
本研究では,車両の燃費向上に役立つ高効率オルタネータの実現を目標に,ステータに電機子巻線と交流界磁巻線を備え,マルチプルバリアロータ(MBロータ)で磁気変調効果して動作する,新型のオルタネータ(交流励磁二重巻線式リラクタンス発電機"交流励磁DWRG"と呼称)を開発した。平成22年度は,有限要素解析(FEA)によるシミュレーションを実施して,交流励磁DWRGのオルタネータとしての特性を詳細に分析した。交付申請書に記載した研究実施計画では,過去2年間の研究成果を踏まえて,新たに改良機を設計・製作することも予定していたが,昨年まで使用してきたシミュレーションソフトに不具合が生じ,ソフトの新規購入と入れ替え作業を行った。このため,研究が遅れ,改良機の設計・製作はやむを得ず断念した。 本年度の具体的な研究成果は,次のとおりである。すなわち,量産オルタネータと同一体格の交流励磁DWRGモデルを作成し,FEAにより電気および磁気特性を分析した。併せて,界磁の励磁方式(交流励磁と直流励磁)による特性の差異を調べた。結果として,交流励磁DWRGは,1)低速回転域で界磁起磁力をロータの回転方向と逆方向にすることで直流励磁に比べて出力が増加できる,2)電機子側に伝わる有効電力は直流励磁と異なり軸からだけでなく界磁側からも供給できる,などのことを明らかにした。これにより,交流励磁DWRGが低速領域から電力の得やすい車両用オルタネータとして有用なことを確認した。しかし,量産オルタネータと比べて出力密度が小さく,実用化のためには改善の余地があることも判明した。
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