初年度は、GaAs との格子不整合量の少ない Ge 基板上への分子線エピタキシー(MBE)によるGaAsバッファ層の成長とその上のInAs量子ドットの自己形成について検討した。まずはGe(001)基板表面処理としてフッ化水素系溶液によるエッチング処理と熱処理を行い、その条件の最適化を行った。GaAsバッファ層成長の初期には低温でのマイグレーション促進エピタキシー(MEE)法により GaAs10 分子層(ML)を成長し、その後段階的に基板温度を上昇させながらGaAsバッファ層を膜厚0.5〜1μm成長した。このGaAs成長過程を高速電子線回折(RHEED)によりその場観察し、成長後は原子間力顕微鏡(AFM)によりGaAs表面の平坦性を調べた。APB発生は平坦性および結晶性を劣化させるが、成長温度や成長速度などの MBE 成長条件の最適化により、APB の少ない比較的平坦で結晶性の良好な GaAs バッファ層の成長技術を確立した。その後、InAs の Stranski-Krastanov (SK) 成長モードによる量子ドット構造を自己形成させた。InAs の成長条件はこれまで所属機関で開発してきた高均一 InAs 量子ドットの形成条件を適用し、従来の GaAs 基板上の InAs 量子ドット構造との比較を行った。 Ge 基板上の InAs 量子ドットのサイズや形状 (ファセット面) そしてサイズの均一性は、GaAsバッファ層の平坦性に大きく依存したが、平坦性の良好な成長条件で成長した GaAs 層上では、従来の GaAs 基板上のものとほとんど同じドット構造と均一性を示し、そのフォトルミネッセンス(PL)測定における発光強度も比較的高く、良質の InAs 量子ドットを Ge 基板上に形成することが可能となった。平成21年度は、この成果を基にして太陽電池構造に必要とされる高密度でかつ高均一の InAs 量子ドットを Ge 基板上に作製し、さらに量子ドットの有機薄膜でのキャッピングについて検討を進める予定である。
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