本年度は当初、アモルファスSiの製膜条件と微結晶Siの製膜条件との境界領域で作製したSi(以下、proto-crystalline Si)薄膜おける光子エネルギー1.4eVを中心とする1.1〜1.6eVの光吸収(以下、局在準位吸収と記述)について、局在準位のバンド端からの位置を探るため、光熱ベンディング分光法による光吸収スペクトル測定を、主としてpおよびn型にドーピングしてフェルミエネルギーの位置を制御した試料を対象に行う予定であった。しかしながら、この局在準位吸収の発現が、申請当時に見いだしたホットワイヤーCVD法で作製したproto-crystalline Si薄膜でのみ観測されるものか、あるいは他の作製法で製膜したproto-crystalline Si薄膜にも観測されるものかを押さえておくことは、現象の普遍性を調べる上で重要な点であると考えられる。この観点から本年度は、Si系薄膜の製膜法として産業界で主流を成しているプラズマCVD法にて作製したproto-crystalline Siでも局在準位吸収が観測されるかどうかについて調べ、以下の結果を得た。 ホットワイヤーCVD法だけでなくVHFプラズマCVD法により作製したproto-crystalline Siでも光熱ベンディング分光法で測定した光吸収スペクトルにおいて、フォトンエネルギー1.1〜1.6eVの領域に局在準位吸収を観測した。このことにより、proto-crystalline Siにおける局在準位吸収は製膜法に依存しない特性であることが分かった。また、光吸収スペクトルの大気暴露効果について調べ、VHFプラズマCVD法により製膜した試料の光吸収スペクトルでは、光吸収係数αが1×10^1cm^<-1>から5×10^1cm^<-1>に増加し、Hot-Wire CVD法により製膜した試料の大気暴露効果とは逆の現象が生じることを見いだした。
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