アモルファスSiの製膜条件と微結晶Siの製膜条件との境界領域で作製したSi(以下、proto-crystalline Si)薄膜おける光子エネルギー1.4eVを中心とする1.1~1.6eVの光吸収(以下、局在準位吸収と記述)について、昨年度の後半は暗中での大気暴露効果について調べ、Hot-Wire CVD法により製膜した試料では局在準位吸収の光吸収係数αが5×10^1cm^<-1>から2×10^1cm^<-1>まで減少することを見いだした。このことは、局在準位の起源などを明らかにするための重要な情報と判断し、今年度は光吸収スペクトルの光照射による変化に関し大気暴露の有無による違いを調べ、以下の知見を得た。 光熱ベンディング分光法によるproto-crystalline Siの光吸収スペクトル測定により、~10^<-3> torrの真空中での光照射(100mW/cm^2、A.M.-1.5)では、局在準位吸収の光吸収係数αが5×10^1cm^<-1>から3×10^1cm^<-1>までの減少にとどまり、大気中での光照射によりαが3×10^1cm^<-1>から2×10^1cm^<-1>までさらに減少することを見出した。また、大気中での光照射後における局在準位吸収の光吸収係数と、暗中での大気暴露のみ行った試料の局在準位吸収の光吸収係数は同程度(2×10^1cm^<-1>)であることが分かった。 これらの結果より、proto-crystalline Siにおける局在準位吸収の起源として、製膜中もしくは製膜後の膜中に取り込まれた酸素または水蒸気に関連する不純物が考えられることを示した。すなわち、この不純物がproto-crystalline Siのバンドギャップ内に不純物準位を形成し、これが光吸収のセンターとなる可能性を示唆した。
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