研究概要 |
本年度は電子線照射実験時のエネルギー吸収分布に関して定量化を行うための手がかりとして,非接触・非侵襲でリアルタイムに対象とする資料の内部温度分布を可視化が可能である,感温液晶マイクロカプセル(MTLC)による方法を検討した.具体的には温度の定量化手法の開発を行った.そのために非圧縮デジタル画像を取得できるCCDカメラシステムを導入し可視化画像の劣化の低減を試み,温度分布を定量化するのに十分な画質の画像を得ることが出来た.また定量化において,温度をパラメータとするMTLCの発色特性をRGB色空間上の軌跡として表示し,温度と色を1対1対応させる校正手法を開発し,温度定量化の精度を高めた.この手法は測定の入射光,観測するためのカメラの仕様に係わらず使用できるので,MTLCを用いた温度定量化手法をより実用的にできるという点で意義がある. また上記の定量化手法を利用し高エネルギー電子線照射時の透明エポキシ試料内の電子線による温度上昇分布の測定を行った.入射電子の加速エネルギーに関して1MeV,1.5MeV,2.0MeVの3条件で実験を行った.その結果PEA法(パルス静電応力法)により得られる粒子蓄積位置よりも浅い位置に温度上昇のピーク位置があり,入射電子線により運動エネルギーが照射材料に付与される位置が粒子蓄積位置よりも比較的浅いことがわかった.また今回の加速エネルギーの条件で,粒子蓄積位置と温度が最大値を取る位置の比を取ると,電子の加速エネルギーに係わらず,ほぼ一定の値(0.3)になることが分かった.この結果を物理的に説明するために,次年度に向けて相対論的な効果を取り入れた粒子シミュレーションコードの開発に着手した.
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