研究課題
本研究では、有機EL膜上に透明電極膜をスパッタ法で形成した場合に有機EL膜が受けるダメージの原因について解明するとともに、ダメージなしでITO電極膜を作製する技術を開発することを目的としている。本研究では、まず、有機EL薄膜の表面に大きな運動エネルギーをもった電子、Arイオン、および酸素イオンを照射して、有機膜が受けるダメージを評価した結果、いずれの場合も数十eV以上のエネルギーを持つ高エネルギー粒子の衝撃は有機膜に大きなダメージを与えることを確認した。さらに、有機膜上にITO透明電極膜をスパッタ成膜することで、有機膜がダメージを受けること、このダメージはスパッタ成膜時にターゲットから放出される酸素負イオンや2次電子による基板衝撃が起こらない対向ターゲット式にターゲット・基板配置を用い、スパッタ成膜時のガス圧を1Pa程度のやや高い圧力に設定することで、抑制できることを明らかにしてきた。また、スパッタ時にターゲット表面で反射される反跳スパッタガス原子の基板衝撃によるダメージはさほど大きく無いものの、スパッタ放出粒子に含まれる高エネルギー粒子による基板衝撃によるダメージはかなり大きく、これを抑制するために、スパッタガス圧1Pa以上で成膜することが必要であることが分かった。これらの結果を踏まえて、昨年度、ダメージ無しで透明電極膜が作製できる対向ターゲット式スパッタ源を備えた、有機EL素子の作製が可能な装置を製作し、この装置を用いた有機EL素子の作製を試みている。最終年度にあたる今年度は、引き続き実際の有機EL素子の作製で、上記手法を用いることで、その有効性を確認していく予定である。
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