研究概要 |
平成22年度においては、まず『実験研究』として、(1)固相反応法により作製した高温超伝導多結晶セラミクスRuSr_2GdCu_2O_8系と(2)スピンコート法により作製した非晶質透明導電性物質「In_2O_3-GaO_2-ZnO(IGZO)薄膜系」を対象として熱電特性を評価した。その結果、試料(1)について、キャリア数を制御した場合に、従来から知られている優良なセラミクス熱電物質であるNa_<0.5>CoO_2系より優れた「電力因子P=S^2σ」(S:熱電能,σ:電気伝導率)」を有することが分かった。一方、試料(2)については、単独では良い熱電材料ではないが、IGZOとインジウムスズ酸化物との混晶薄膜において特性が改善できることを示した。 次に『理論研究』としては、昨年度までに測定した熱電能の温度変化S(T)に対して、「2バンドモデル(2BM)」と「狭い伝導バンドモデル(NBM)」に基づいて解析を行った。その結果、2種類のモデルとも実験結果をよく説明できると共に、同じ系列の試料については、バンド幅等のパラメータは系統的な変化が見られた。しかし、異なる系列に対しユニバーサルな相関性は顕著には認められなかった。一方、本研究で独自に提案した「パーコレーション指標」は研究した全てのセラミクス系において電力因子Pと統一的な結果を得ていることから、スペクトロスコピーの手法として有効であることが確立されたと考えている。最後に、上に述べた局在電子型のバンドを想定している「2BM」とは異なり共に伝導電子を有する2つの重なったバンドを持つ物質系をモデルとして、その熱電能の理論式を導き、それを用いて数値的シミュレーションを行うことにより熱電特性が向上する条件を導いた。
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