本研究では、エアホール型二次元フォトニック結晶とsiイオン注入を用いた新規光導波路の実現を目標としている。基板面に平行な方向に対しては、二次元フォトニック結晶によるフォトニックバンドギャップ効果を利用し、放射損失が限りなくゼロに近い強い光閉じ込め作用を狙い、基板面に垂直な方向に対しては、Siイオン注入により形成される滑らかな屈折率分布により緩やかな光閉じ込めを図る。特に、基板面に垂直な方向に対しては、Siイオン注入時のイオン照射エネルギーと照射濃度を調節することにより屈折率分布を制御することができ、光ファイバとの結合が容易となる大きなスポットサイズを、低損失で実現可能となる。 今回は、まず、原子力研究開発機構の協力の下、熱酸化によりSi基板上に形成されたSiO2膜に対し、照射エネルギー80keV、照射量1×1017ions/cm2の条件下で室温にてSiイオン注入を行った。その後、イオン注入時のダメージ回復のため、700℃で20分間のアニールを行った。次に、電子ビーム描画及びECRプラズマエッチングにより二次元フォトニック結晶を加工した。エッチング後の試料表面の原子力間顕微鏡観察により、ほぼ狙い通りのエアホールパターンが形成されていることを確認した。エアホールの直径は466nm(設計値465nm)、周期666nm(設計値664nm)であった。本試料の動作波長は、長距離光ファイバ通信用の1.55μmと設定している。以上の結果より、Siイオン注入及び二次元フォトニック結晶加工を施した試料の作製に成功したため、現在、光導波特性の評価を行っている段階である。
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