Siイオン注入を利用した新規SiO_2系フォトニック結晶導波路の実現を目指し、そのための基礎検討を、理論及び実験の双方の観点から行った。 SiO_2薄膜にSiイオンを注入すると、深さ方向に緩やかな屈折率分布が生じ、それだけで深さ方向に対しては光閉じ込め効果が得られる。更に、そのSiO_2薄膜に、周期的な円孔配列(二次元フォトニック結晶と呼ばれる周期構造)を加工すると、ある波長帯の光の伝搬を禁止されるため、未加工の部分をコアとする三次元閉じ込め型の光導波路を構成することができる。二次元フォトニック結晶導波路の特長は、膜面方向に対して急峻な曲がり導波路を実現でき、これを配線とする光回路の高集積化を図れる点にあるが、この構造では、前述の深さ方向の緩やかな屈折率分布から、(1)導波光のモードフィールド径を比較的大きくできる(光の入出力が従来型より容易になる)、(2)深さ方向のコア/クラッド界面で生じ得る散乱損失を最小限にできる、といった特長が新たに加わる。 このような新しいタイプのフォトニック結晶導波路の実現に向け、微細加工プロセスの最適化を進めるとともに、作製した構造の有限時間差分領域(FDTD)法による光伝搬シミュレーションを行った。その結果、直線状の導波路構造は低損失で導波し得るが、60°曲がり導波路においては、単純な線欠陥導入だけでは光パワーが十分に伝わらないことがわかった。今後は、このシミュレーション結果を踏まえ、曲がり部分の円孔配置の工夫等により、低損失な60°曲がり導波路の設計及び作製を進めていく予定である。
|