主として、高周波弾性波動可視化システムにおけるデータ収集の高速化について検討を行った。この結果、従来から高速スキャンが可能であった可視化システムを更に高速化することに成功した。 本申請者の属するグループでは、光学系にナイフエッジあるいは、サニャック干渉計を用いることで、高周波弾性波動可視化システムの開発を行ってきた。このシステムは本質的に低い周波数の振動に対する検出感度が低く、デバイス表面スキャン時の振動の影響を受け難いことを利用し、ステージの一時停止無しにデータ収集を行うことで、1時間以下で十分な解像度を確保する、画期的に高速なシステムを開発してきた。このシステムでは、スキャンが一定の速度ではないため、デバイスを乗せたステージに取り付けられたリニアスケールが40nmおきに発生するパルスをトリガとしてデータ取り込みをしている。このシステムに対し、20年度の検討では、アナログ信号処理系で不可避に発生する遅れ時間を補正する装置を新たに考案・試作した。これにより、従来不可能であった往復スキャン時でも収集データとスキャン位置を同期させることに成功した。このことは、同じ解像度の二次元振動分布データを収集する際に必要な測定時間を、およそ半分にまで短縮できることを意味している。この成果により、筆者の知る限りこの分野では最速のスキャン速度を持つ弾性波可視化システムの構築に成功した。なお、このシステムは機械的な走査を行う測定システムに広く応用できる可能性を有するものと考えられる。また、デバイスの傾きを機械的に補正し、明瞭な画像取得を行う手法などについても同時に検討を行い、より実用的な可視化システムについての検討を行った。
|