主として、走査型高周波弾性波動可視化システムにおける走査時間短縮を可能とするデータ収集方法の改善、ならびに光学系における観測対象の傾き補正に関する検討を通し、弾性波可視化システムの実用化に向けた検討を行った。 これまでの検討で、非測定デバイス表面をレーザープローブが走査する際に生じる実際の測定点とデータ取込時におけるサンプル点のズレが原因で生じる波動観察画像の劣化を補正する補正装置の原理的実験に成功していた。21年度は、これをより実用的な物にするためユーザーインターフェースの整備や回路およびファームウェアの調整を行った。これにより新規製作した補正装置を用いて、その効果を詳細に検討したところ、1GHz程度までの弾性波観察において、振幅分布を対象にする場合には十分な効果を持つことが確認された。ただし、更に高い周波数での測定や、位相を高精度に観察する場合などには、補正装置の限界により一部制限のあることがわかった。この結果に基づいて、22年度では回路構成を変更し、より高い能力を持つ補正装置を試作する予定としている。なお、これらの成果についてはIEEE超音波シンポジウム(ローマ)で発表された。 次に、被測定デバイスの傾きを補正する手法についての検討を行った。高倍率の光学系を利用してプロービングを行う場合、焦点深度が浅くなるため測定対象のわずかな傾きにより、大幅な感度変化を生ずることが問題となっていた。この問題に対して21年度は、ステージを深さ方向に僅かずつ動かし、レンズから測定対象表面までの距離を動的に制御する方法で対応することを考えた。この発想に基づいて、可視化システムの光学系を改修すると共に、これらを制御するソフトウェアを構築して実験を行ったところ、従来は感度にムラを生じていた高周波BAWデバイスの観察において、観察領域全体にわたって感度ムラを大幅に低減することに成功した。なお、これらの成果については、日本応用物理学会誌上で発表されている。
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