光の回折限界をはるかに超える解像度をもつ負性屈折率完全レンズを実現するため、本年度は特に、銀薄膜スーパーレンズによる超高分解能イメージング効果を詳細に解析した。銀、クロム等の誘電率の光領域での周波数特性をLorentz-Drudeモデルを用いて表し、Fangらの実験結果を数値的に確認することができた。これまでの途中結果では、2次元モデルにおいて銀薄膜による負の屈折効果、エバネッセント波がレンズ効果によって絞られ結像している様子が得られていたが、3次元モデルにおいて、微細なマスクパターン(線幅40nm)が超高解像度(波長361nmに対し解像線幅80nm)で可視化される様子が確認できた。さらに詳細な解析では、最適構造、損失の影響を考慮し、また、銀薄膜を他の金属(金、アルミ等)、構造に置き換え、エバネッセント波がどのように分布し結像するかを詳しく検討した。数値解析には、これまでに開発した並列FDTDプログラム、および今年度導入した並列Linuxクラスター計算機を用いた。このような並列計算手法はFDTD解析に適しており、これまでのメモリ容量の制約が事実上解消され、大規模な解析が効率よく行える優れた手法であることを示した。また、予備解析として、誘電体および金属の球体からなる複合構造および金属微少球クラスターの光照射により生じる力を同様のFDTD解析により明らかにし、今後、薄膜中に金属球を分散させた構造を光波長により制御し、目的の光学的特性を有する光多層膜結晶構造を作成するための基礎的検討を行った。さらに、マイクロ波領域において、負性屈折率完全レンズの実験による検証を行うための実験準備を行った。
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