研究課題
平成20年度の研究実績の概要は以下のとおりである。(1)高周波磁性薄膜材料の開発;MnIr/FeSi交換結合膜については、熱履歴による交換バイアス磁界の低下が問題であったが、スリットパターンの導入によって形状磁気異方性を付与する方法を検討し、300℃程度の耐熱性を得ることに成功した。巨大磁気異方性CoSmアモルファス磁性薄膜については、300℃程度の熱履歴で異方性磁界が半分以下に低下し、高周波磁気特性が劣化する問題があった。詳細なTEM観察により、SiO_2下地とCoSm膜の界面でSmが偏析し、これらが結晶化の核生成の要因になっていることを明らかにし、Ru下地層の導入によりSm偏析が抑制され、熱履歴による異方性磁界の低下を大幅に抑えることに成功した。CoFeSiO/SiO_2グラニュラー積層磁性薄膜については、積層構造の最適化を図り、5nm-CoFeSiOグラニュラー層と1nm-SiO_2層の積層構造では、グラニュラー層のCoFe結晶粒径の均一化により異方性分散が抑制され、強磁性共鳴半値幅を大幅に狭帯域化できることを示した。(2)磁性簿膜デバイス;CoFeB磁性薄膜方向性結合器に対して、携帯電話送信系における動作状態を模擬した大振幅信号伝送特性を評価した結果、数W程度の通過電力までは信号伝送特性はほとんど変化せず、800MHz〜2.6GHzでの広帯域動作を実証した。CoSm磁性薄膜インダクタとポリイミドMIMキャパシタからなる2段共振器型フィルタを試作し、GSM携帯電話送信系の高次スプリアスフィルタとしての特性評価を行った。また、チップサイズパッケージ高周波ICへの適用を目的としたCoFeSiOグラニュラー磁性薄膜を用いた薄膜インダクタを試作したが、配線プロセスの不良により、良品歩留まりが著しく低下する問題が明らかになった。今後、パッケージ内部への集積化を念頭においたプロセスの検討が必要である。
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Journal of the Magnetics Society of Japan 33
ページ: 9-14
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