平成21年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1.高周波磁性薄膜材料の開発 CoFeSiO/SiO_2グラニュラー積層磁性薄膜については、CoFe微結晶粒へのPd添加によって強磁性共鳴周波数を2.4GHzから3.4GHzに高周波化できるとともに、Pd添加によって強磁性共鳴吸収線幅が狭くなることを明らかにした。また、強磁性グラニュラー層と反強磁性Mn-Ir層との交換結合によって、強磁性共鳴周波数をさらに4.5GHzにまで高周波化でき、共鳴線幅をさらに狭くできることを明らかにした。 2.磁性薄膜デバイス CoFeSiO/SiO_2グラニュラー積層磁性薄膜を用いたチップサイズパッケージ集積用薄膜インダクタを試作した。電気抵抗率の低いCoFeSiOグラニュラー層の面内うず電流を抑制する微細スリットによる磁性薄膜面内分割構造、ならびに、コイル導体の近接効果によって増大する高周波銅損を抑制する導体分割構造の採用によって、これまで困難であったGHz帯で10を越える高Q化を実現した。また、CoSmアモルファス磁性薄膜伝送線路デバイスを試作し、1/4波長線路としてインピーダンス変換特性を評価した。 LSIパッケージ内蔵DC-DCコンバータの実現を目的として、90℃程度の低温で合成できるZnフェライトめっき膜を用いて、サブmm角サイズの100MHz帯プレーナパワーインダクタを試作した。100MHzにおけるインダクタンスは10nH、Q値は20、20%のインダクタンス低下における直流重畳電流は2A以上であり、これまで様々な機関で検討が進められてきた100MHz帯一集積化DC-DCコンバータ用インダクタとして最高の特性を得ることができた。
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