研究概要 |
本研究は,平面型固体照明やディスプレイに応用可能な大面積発光デバイスを最終的な目標としており,従来の電界型ではなく,電流注入型の無機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスの実現を目指している.具体的には,高効率キャリア注入構造の実現,発光届の発光色・効率の向上,注入型ELデバイスの作製技術確立などを目的とする.以下,本年度の実績の概要を述べる. 1.硫化亜鉛(ZnS)系単結晶および多結晶薄膜の高品質化:ELデバイス構造において必要となる,ITO等の透明導電膜上の多結晶n型ZnS薄膜の高品質化の検討を行った.また,p型伝導性制御のための基礎として,単結晶エピタキシャル成長膜の高品質化の検討も行った. 2.キャリア注入構造の検討:想定している発光デバイス構造のうち,ZnS系半導体を用いたn型伝導層と,薄膜蛍光体を応用した発光層は作製可能であるので,p型伝導層との接合形成が課題である.これについて,異種p型伝導材料とのヘテロ接合作製と,p型ZnSの実現によるZnS-pn接合の作製の両面から研究を進めた.特に,従来困難とされている後者のための基礎として,まず単結晶エピタキシャル成長膜におけるp型化の研究を行った.具体的には,分子線エピタキシー法によるZnS単結晶のエピタキシャル成長において,従来から研究してきたリン(P)アクセプタ添加の研究に加え,窒素(N)ガスプラズマを用いてNアクセプタの添加を行い,その作製条件を詳細に検討することで,p型化を図った.その結果,N添加ZnS単結晶薄膜の電気的特性において,初期的結果ながらp型化の傾向を初めて確認した.今後,さらなる作製条件の最適化や,他の不純物との共添加等により実用的なp型特性,pn接合作製を目指す.
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