本研究課題における具体的な目標は次に示す2点である。 ・多層プリント回路基板における電磁波伝搬の減衰効果の大きいEBG単位セル設計アルゴリズムの構築 ・磁性膜と組み合わせて最少単位セルで十分なノイズ抑制効果を有するプレーナEBG構造の実現 平成20年度は上記目標に対して研究を遂行し、以下の成果を得た。 1磁性膜を適用したEBG構造による不要電磁波伝搬抑制 ノイズ抑制シートを電源/グランド層間へ挿入した実験により、EBG構造の小型化及び高周波側への阻止域拡大を実現できることは既に判明している。今年度は、小型化に有効な阻止域の低周波側へのシフトがノイズ抑制シートの異方性誘電率の効果によるもので、特にスリットにおける面内方向の電界成分に作用したためであることを実験とシミュレーションから明らかにした。さらに、高周波側への阻止域拡大が透磁率の虚部の効果によることも確認した。以上より、磁性膜を用いて効果的なノイズ抑制特性を示すEBGパターン形成のために有効な知見を得た。 2EBG単位セル設計ツールの開発のための計算手法の確立 プレーナEBG構造では幅の狭いスリットを導入することでEBG単位セルのパターン形状を実現するため、微細構造分割を伴う電磁界計算ではこのような狭いスリットを含むことによる計算コスト上昇が避けられない。設計ツールでは最適化のために繰り返し計算が求められる。そこで、スリット間の電磁結合を表現するため、結合マイクロストリップ線路から求めた等価回路モデルを用いて単一のスリットのみを含むスリットセグメントを構成し、グリーン関数のモード展開を利用するポート問インピーダンス解析手法に対してセグメンテーション法を適用するためのスリットモデルを実現した。これにより、微細構造分割を行わず、高速かつ実用的な計算精度での電磁界解析を可能にした。
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