本研究課題における具体的な目標は次に示す2点である。 ・多層プリント回路基板における電磁波伝搬の減衰効果の大きいEBG単位セル設計アルゴリズムの構築 ・磁性膜と組み合わせて最少単位セルで十分なノイズ抑制効果を有するプレーナEBG構造の実現 平成21年度は上記目標に対して研究を遂行し、以下の成果を得た。 1 EBG単位セル設計ツールの開発 EBG単位セル設計ツールを作成するため、MATLABベースの自作シミュレータHISESにスリットモデルを実装した。 2 減衰量の大きな単位セルの要件の電磁界シミュレータを用いた調査 簡易なスリットモデルで狭いスリットの影響をより正確に表現するため、市販の電磁界シミュレータMicrowave Studioを用いて伝送線路モデル(スロット線路で表現)に基づくモデル化を検討した。終端条件が短絡と見なせるスリット単体については正確に表現できた。終端開放の場合やスリット間の電磁結合については十分な精度が得られなかったが、これは22年度の課題である。 加えて、格段の小型化が可能として提案されているオープンスタブ構造を導入したEBG構造について、市販の電磁界シミュレータSonnetを用いてその特性とメカニズムを調査した。伝送線路構造を利用した共振器を単位セル内に導入する手法は非常に興味深く、我々が検討している単位セル構造に対する重要な知見を得た。 3 テストボードによる実証の準備 当初シミュレータを用いた特性解析で実証準備を行う予定であったが、関係機関の好意により、実際のプリント回路基板と同じ製造工程でフェライト磁性薄膜を導入したEBG構造のテスト基板を試作した。テスト基板を評価したところ、これまでに電磁界シミュレータで得られた結果とよく一致することが判明し、磁性膜によるノイズ抑制効果の有効性を確認した。
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