本研究では、均一性・指向性に優れエネルギー分散の小さい高品質な電子ビームを形成することを目的として、シリコン微結晶層を用いた平面型冷陰極の指向性の向上と低エネルギー分散化について検討を行う。本年度は、電子放射特性評価装置を改良・整備すると共に、電子放射部を小さくアレイ化した平面型冷陰極アレイの構造設計および露光用マスクの設計・製作を行い、パルスレーザアブレーション法を用いてシリコン微結晶膜からなる平面型冷陰極アレイの試作と放射電流量の計測を行った。その結果、放射電流は、従来のアレイ構造を有しない素子と同様、ゲート電圧6V程度の低電圧から観測され、ゲート電圧の増加に伴い急激に増大した。ゲート電流はアレイ化していない素子と比べて1桁程度小さく、これまでに、電子放射効率2%を得ている。印加電圧25V以下では、放射電流、ダイオード電流ともに飽和傾向を示していない。電子放射部をアレイ化することで、ゲート電流が減少し、薄膜ゲートでの電圧降下が抑制されたためと思われる。
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