本研究では、均一性・指向性に優れた高品質な電子ビームの形成を目的として、パルスレーザアブレーション法を用いて形成したシリコン微結晶層からなる平面型冷陰極を製作し、放射電子の面内均一性、指向性およびエネルギー分布等について検討を行っている。 これまでの研究から、ゲート薄膜電極の電圧降下によって電子放射部の電界が不均一となり、放射ビームの面内均一性、指向性が低下することが明らかとなっている。 本年度は、ゲート薄膜電極部分の電圧降下に起因した不均一な電界分布を抑制するため、エミッション領域を小領域に分割しアレイ化した素子を製作し、放射ビームの面内分布の計測を行った。その結果、プローブの走査ピッチの都合上、個々のアレイに分離できていないが、放射分布の面内均一性および指向性において大幅な改善を確認した。また、放射電子のエネルギー分析により、アレイ化した素子のエネルギー半値幅は0.5~1.5eV程度とアレイ化しない場合(2~4eV)に比べて低分散化することを確認した。これらより、平面型冷陰極の高指向化・低エネルギー分散化には、アレイ構造が有用であるとの知見を得た。
|