記録密度1平方インチ当り1テラビット(1Tb/in^2)以上の情報記録装置の一つとして光・磁気ハイブリッド記録があるが、主として光ヘッドに磁気ヘッドを混在させる困難さから待望されながらも、未だに実用化の目処を得るに至っていない。本研究では、現状を打破するため、近接場利用微小光スポットによる局所的温度上昇を充分活かし、かつヘッドの作製が容易な光スポットに比べ範囲の広い磁界すなわち磁界勾配の小さなヘッドによる磁界を加える方式を検討する。以下に、本研究で得られた成果を示す。 1.FDTD法による近接場光の電界強度解析結果を基に、記録媒体の温度の昇降温過程と空間分布を熱拡散方程式に基づくシミュレーションにより解析した。孤立円柱形状の記録媒体を用いる場合について、アンテナ先端部形状、孤立粒子配列、及び、アンテナと孤立微粒子の相対位置関係について詳細に解析を行った。アンテナ先端部と粒子とが重畳する場合には、アンテナ-粒子間における電界増強効果及び加熱効果が著しく増大することを明らかにし、粒子配列及びアンテナ先端部構造、ポジショニングにより周辺部の加熱を抑制可能であることを示した。このことは、熱アシスト記録方式の実現とその記録密度の向上に対して貢献する。 2.ICPエッチング法を用いることによる埋設型構造を有する耐消耗性の高いプラズモンアンテナ構造の作製、及び、電子線リソグラフィ法を用いたリフトオフ法による近接場光形成に必要なプラズモンアンテナの作製を行った。本検討は、熱アシスト磁気記録方式の実現に貢献する。 3.4回対称性を有する近接場光発生アンテナを用いることにより、入射光の波長以下の局所領域に円偏光を形成可能であることを示した。本結果は磁極を用いずに光のみを用いて局所領域の磁化を反転させる新たな記録方式の実現に貢献する。
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